化学物質過敏症

化学物質過敏症とシックハウス症候群とはイコールではありません。

厚生労働省のガイドライン値以上の室内で起こる諸症状がシックハウス症候群であり、ガイドライン値以下でも発症するものが化学物質過敏症です。

化学物質過敏症は、平成21年に厚生労働省によってレセプト(診療報酬明細書)に記載できる病名リストに登録されました。

化学物質過敏症は高濃度のある種の化学物質の影響で、化学物質に過敏な体質に変化し、その後、同じまたは類の化学物質にさらされるたびに、その化学物質がかなり低い値であっても、同じ症状が繰り返され、その症状が次第にひどくなる病気のことです。

ある化学物質を一度に多量に、または少量を慢性的に浴び、許容量を超えたときに突然発症します。
スギにアレルギー反応を示して花粉症になった患者がマツにもブタクサにも反応するようになるのと同様、発症原因となった化学物質に限らず、ごく微量のさまざまな化学物質に拒否反応を示すようになることが多いですが、一人ひとり、反応する化学物質が異なるのがこの病気の特徴といえます。

シックハウスが原因のケースが最も多いですが、最近では香料が原因と思われるケースが大変増えています。
単独の化学物質に過敏に反応する場合が化学物質過敏症(CS)ですが、複数の化学物質に反応するようになった場合は、正確にいうと多種類化学物質過敏症(MCS)で、日常的生活に支障が生じるようになります。

症状は頭痛や倦怠感(けんたいかん)、不眠など多様で、これといった特徴はありません。人によっても異なります。
患者は「仕事の疲れ」と考えて病院に行かなかったり、受診しても検査に異常が出にくいため、心身症や、女性の場合は更年期障害と診断されたりすることが多いです。
大阪の専門医である吹角院長は「かなりの患者が見落とされているが、日本人の10人に1人はいる」と推測しています。
発症に気付かず化学物質を浴び続けると重症化する恐れもあり、重篤になると、防毒マスクがなければ外出もままならなくなる場合もあるといいます。
わずかなにおいに対しても、不快感や症状の誘発を示すことが多いのが特徴です。

対策としては、できる限り化学物質から遠ざかる生活を送る必要があります。
家の中では新建材やカーペットなどの化学物質のにおいのする環境や高気密で換気が不十分な環境、食品添加物を使用した食品などは排除し、やむを得ず取り入れてしまった場合には運動などにより代謝を高め、化学物質を体外に排出する必要があります。

現状では医学界におけるコンセンサスが完全に得られている状況ではなく、診断法も確立されていません。
原因と思われる行為や物質との間に因果関係が必ずしも科学的に証明できない状況ですが、成分表示の義務付けや厳しい規制値を設定するなどの予防原則的対応が求められているのではないでしょうか。

以下、化学物質過敏症の患者で、あすぷろ協力者の佐々木香織さんが書かれたものです。