金属アレルギー

実行委員の鈴木久子さんのブログから転載します。

1)我が国では、1300万人が金属アレルギー疾患に罹患している

情報提供:日本メタルフリー歯学学会

現在日本では、何らかの金属に対してアレルギーを持つ人が1300万人いると言われています。
また今後も増加するでしょうと、日本メタルフリー歯学学会の理事長がおっしゃっています。

金属アレルギーを発症するきっかけとしては、ピアスによる穴あけや歯科治療時に使用される金属の詰め物であることが多いと言われていますが、現状それだけではないでしょう。
その方が「金属にどれだけ多く触れたか」で発症のリスクも上がってくると考えられています。

金属アレルギーのメカニズムとしては、金属そのものがアレルゲンにはなりません。
金属が汗などによって溶け出し、そのイオン化した金属が皮膚のケラチンなどのタンパク質と結合します。それがアレルゲンとなるわけです。
その物質が皮膚バリアの壊れている箇所から体内に侵入し、それを体が異物として攻撃し、「抗体」を作ります。
抗体が一旦できてしまうとアレルギーを引き起こす原因金属(アレルゲン)と接触するたびにかゆみなどの皮膚炎を生じてしまいます。
これが「金属アレルギー」です。

アレルギー性接触皮膚炎
・・・アレルギー性のかぶれは痒みが強く、原因物質と接触した部位を越えて皮膚炎がひろがります。
発赤、腫れに加えて小水疱を生ずることがあります。※アクセサリー等の装飾品でよくある症状です。

アレルギー性全身性皮膚炎
・・・金属イオンが血流によって全身に運ばれると、金属イオンが汗とともに手のひらに排出された場合に以下のような症状があるようです。※歯科治療での金属の詰め物が原因の場合が多いようです

・手のひらや足の裏などの末端に小水疱という症状が表れる。
多くの場合は「よくある肌荒れ」「水虫だ」と誤診される場合もあるようです。
・皮膚が広い範囲に渡って赤くなる
・手足や腹部、背中などに小さい赤いブツブツができる
・じんましん(じんましんの原因は非常に多くありますが、そのうちの一つとしても考えられています)

2)金属アレルギーと聞いて皆さんどのようなイメージがありますか?

・安物のアクセサリーを身につけるとかゆくなる
・ネックレスは大丈夫だけれどピアスはかゆくなることがある
・高級なものなら大丈夫

が一般的ではないでしょうか。


金属アレルギーは原因や対応が分かりにくいとされていますが、考え方は食物アレルギーと似ています。

どの金属が苦手かが分かっており、どの金属が混ざっているかが分かれば、その物質を避ければアレルギー反応は出ない、という事です。

3)アクセサリーやお鍋はすべて「合金」

まず知っておいて頂きたいのは、金属製品=合金 ということ。

※合金とは?
単一の金属元素からなる純金属に対して、複数の金属元素あるいは金属元素と非金属元素から成る金属様のものをいう(wikiより抜粋)

例えば、ネックレスチェーンに「K14WG」と刻印があったらこの金属にどの金属が混ざっているかご存知でしょうか。

K14-->58.5%が純金(Au)です
WG-->ホワイトゴールドの略です。

ですので、「K14WG」とは、メーカーによって異なる事も有るようですが、
大抵が、58.5%純金で残りの41.5%が銀(Ag)や銅(Cu)、パラジウム(Pd)などです。
プラチナのような白金色を表現するために、銀とパラジウムが使用されています。

では、「K14PG」ですとどうでしょうか。

K14-->58.5%が純金(Au)です
PG-->ピンクゴールドの略です。

58.5%純金で残りの41.5%が銀(Ag)や銅(Cu)です。こちらはパラジウムが含まれていない代わりに、ピンク色を表現するために「銅」が多めに使用されています。

ホワイトゴールドには「パラジウム」が使われていますので、
パラジウムにアレルギーがある方はピンクゴールドは大丈夫だけれど、
ホワイトゴールドを身に付けるとアレルギー反応が起きる可能性があると言うことです。

4)イオン化しやすい金属とイオン化しにくい金属で決まる?

「イオン化傾向」という言葉があるのですが、これは汗などによって金属がイオン化しやすい順にならべたものです。

左に行くほどイオン化傾向が「高く」、溶け出しやすい(陽イオンになりやすい)事を示しています。
具体的には、ニッケルよりもプラチナの方がイオン化傾向が「低い」ので溶け出しにくいと考える事が出来ます。

こちらは、元素周期表です。
ピンクの枠がアクセサリー等の装飾品で使用される事の多い金属です。
その中で金属アレルギーの原因金属とされる「ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム」は赤字で示しています。

表の下に行くほどイオン化傾向が低いので、ニッケルよりもパラジウムのほうが金属アレルギーの原因になりにくいことが分かります。

そしてパラジウムよりもプラチナのほうが下にあり、金属アレルギーの原因になりにくいのですが、
それでもプラチナにアレルギー反応を起こしてしまう敏感な方はいらっしゃいます。

プラチナのアクセサリーでも金属アレルギー反応を起こす人がいます

5)金属アレルギーの発症予防は可能?

金属アレルギーの発症予防はある程度可能なのではないかと考えられています。

・虫歯を作らないように適切な口腔ケアをする
・虫歯の治療をする場合は、なるべく非金属を使用する
・ピアスの穴をあける際には、専門医の指導の元、イオン化傾向の低いファーストピアスを使用し、ピアスホール定着後も日頃からイオン化傾向の低いピアスを使用する
・スポーツやサウナ等、汗をかくと分かっている時には事前に装飾品を外す

等です。

6)金属アレルギーが重症の場合、医師より食事指導がはいることも

実は私たちが普段食べている食物にも微量に金属が含まれています。
代表的なものとしてご紹介しますと、豆類やカカオ(チョコレート)には非常に多くのニッケルが含まれています。
また、クロムを多く含む食品では、藻類 (アオサ、昆布、乾燥ワカメ等)があります。
他にも、コバルト、銅やスズ等を多く含む食物があり、金属アレルギーが重症の場合は、医師より食事制限が入る事もあります。※必ず医師の指示に従ってください

7)こんな所にも金属アレルギー。「配慮」をするには

私たちの普段の生活の中で何気なく使用しているものにも金属アレルギーの方には困るものも
多い事を知っておくとよいでしょう。

例えば
・買い物カゴの持ち手が金属
・キッチンがオールステンレス
・ドアノブ
・カトラリー(スプーン・フォーク)
・何気なくいただいたプレゼントのアクセサリーや腕時計
・スマートフォンのボディ
・アイシャドー、アイライナー、マスカラ等のお化粧品(酸化鉄や酸化チタンと汗が合わさると・・・)
・化粧小物(ビューラー)
・ヘアピンやヘアアクセサリー
・洋服や下着に使用されている金属製のボタンやジッパー、フック
・ペンなどの筆記用具
・ピンセットや縫い針(ハンドメイドが趣味の方、意外とこの悩みが多いようです)

8)メーカーの対応

近年、各メーカーも金属アレルギーについて配慮をしています。
例えばジュエリーショップで、材質について質問をすると表面加工に使用しているメッキの種類まで細かく回答をしてくれるブランドもあります。

もしご自信が金属アレルギーでご心配の場合は、メーカーに問い合わせをする事をオススメいたします。