繊維製品の安全性について

繊維製品に関連した素材の安全性・機能性を評価する第三者検査機関、「ニッセンケン」の広報担当の瀧瀬ももさんに繊維製品の安全性についてお答えいただきました。
日本の繊維製品は安全なのがあたりまえと思っていましたが、その影には「ニッセンケン」の活躍があったのですね。お話をお聞きして、そのことを痛感しました。
有害な化学物質の危険性が衣食住においてクローズアップされている現在、繊維製品の安全性について改めて考えてみたいと思います。by上坂

 

1.繊維製品にはどんなものがあるのでしょうか。

糸・生地・肌着・洋服(制服等も含む)・雑貨(帽子・手袋・靴等)寝具関連・インテリア関連・ベビーグッズ(ぬいぐるみ等も含む)・着物・脱脂綿(化粧綿・生理用品・医療用品) 他

2.そもそも繊維製品の安全性について、どのように考えたらいいのでしょうか。

フードや紐などの引っ掛かりや幼児のパーツ等の誤飲による事故等、物理的な目に見える安全性と、生地等素材に含まれる有害物質に接触もしくは吸収することが原因で起こる皮膚の炎症やガンの発症等、化学的な目に見えない安全性があり、過去様々な事例があげられています。

(例)金属アレルギーによる指のただれ

(例)ズボンのベルト通しのウエストバンドの内側部分に使用された染料による炎症

3.どんな場合に、安全でないということになるのでしょうか。

形あるもの:JIS規格等にのっとっていないデザインや、検品等がきちんとなされていない商品など
目に見えないもの:発色やはっ水などの各機能性を、安価で効果的に出すために安全性の確認されていない染料や加工剤が使用されていたりする商品など

4.安全なものを選ぶには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。

産地や生産背景がきちんとわかるもの等、透明性のある企業が手掛けている商品を選ぶこと。分かりやすいものとしては、エコテックス認証品等、第三者機関の厳しい検査をクリアしているものであれば確実です。

5.赤ちゃんの場合に、特に気をつけるべきことがありますか。

誤飲や首への巻き付け等の事故防止としてのデザイン性を考え、あまり過度なパーツや長い紐などがついていないものを選びましょう。
また、肌が特に敏感なので、できれば天然素材にすることと、色のきついものや多くの機能性が付加されているものは有害物質が含まれるリスクが大きいため、そのような商品を購入する際は、安全の認証などがあるかを確認することをお勧めします。

6.エコテックス認証とはどういうものでしょうか。

繊維製品の生産工程で使用される可能性のある300以上の有害物質を調べ、その安全性を厳しくチェックする世界トップレベルの繊維製品の安全証明です。日本よりはるかに厳しい安全に対する規制をもつヨーロッパで1992年に生まれ、日々その基準にあわせて安全基準も厳密に管理されています。
欧州では早くから工業が盛んで、特にドイツなどは化学開発も先陣を切っており、その生産に伴う環境汚染が社会問題になりました。そのため、早くから消費者も安全性に対する厳しい目を持つようになったのが、ヨーロッパで厳しい安全規制を行うようになった理由です。
これまでは単に有害化学物質を含まない繊維製品(=規格 100)が求められていましたが、 昨今の世界情勢を見ますと、さらに社会的な要求が高度化し、繊維製品の生産環境、品質管理、化学物質管理、そして企業の社会的責任等が求められることとなり、新しいロゴに変わりました。

7.認証のためにはどんな検査が行われているのでしょうか。

主には材料(素材)、染色、機能付与に関連する化学物質を検査しています。
具体的な例として、綿や麻のような天然素材を使用していれば、原綿を育てる際に殺虫や除草剤等の農薬が使用され、収穫後も残留の可能性があり、染色工程で使用される着色剤(染料、顔料等)、機能付与するための加工剤(はっ水、防しわ等)に発ガン性、アレルギー誘発性、内分泌かく乱性のある有害な化学物質が含まれるかを分析します。

8.どんな企業が参加しているのでしょうか。

繊維関連の製造に携わる、ナショナルブランドの大手メーカーから小ロットでこだわりの品を作るような会社まで、多岐に渡ります。消費者の安全を考えた、真摯なものづくりをする企業であることが共通点です。
世界でのべ1万企業以上が取得し、日本でも現在までで約4000件の認証実績があります。
最新認証リスト(掲載していないものも中にはあります) 

9.有害な化学物質というのは、具体的にどんな害があるのでしょうか。

まず、有害な化学物質とは、欧州や日本等の法律で危険とされる化学物質を指します。
その判断基準としては、過去の被害の事例に基づく研究やラットなどでの検査、また化学構成や化学反応を理論的に考えて危険性が高いとされるものなどから区分けされています。

 日本においては「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」というものがあり、その中で規定されている化学物質を有害と判断しています。欧州にもREACH規則というものがあり、そこで規定される化学物質を同様に有害としています。

皮膚の炎症や発ガン性、アレルギー誘発性やホルモンバランスへの障害、知覚障害、肝臓肥大、貧血など多くの害を及ぼす可能性のある物質があります。
規制対象物質の用途と毒性について

10.有害物質に関して、どんな法律・規制があるのでしょうか。

例えば、ホルムアルデヒドによる皮膚、眼、呼吸器に刺激性があることは有名ですが、
他にも昨年から規制となった特定芳香族アミンという発ガン性を持つ有害な物質にかわる染料の使用等が、日本の法律(「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」)で規制されています。
実は、繊維製品に関する日本の規制はゆるく、ヨーロッパをはじめ、中国や韓国の方が厳しく規制されています。

11.天然繊維ではどんな工程で、化学物質が使用されるのでしょうか。

天然繊維(原綿)に関しては、7.に記載したことがあげられ、その他、糸を作る工程(紡績)では紡糸性能向上のため油剤が使用され、糸を生地にする工程(織布)でも経糸では糊剤、緯糸でも油剤、その後の加工でも白くするために漂白剤、着色すれば染料、染色性を高める染色工場剤等、多くの化学薬剤が使用されます。