第68回

波瀾だった過去68 父のトラウマ

仕事を辞め
1日家にいるものの
笑えるようなことはなくて
ただボーッとする日が続く


まだ幼い子どもたちの
無邪気な笑顔だけが
私には救いだったが
同時に
だからこそ頑張らなきゃ!という
プレッシャーにもなっていた



子どもが二人いるということで
生活保護は毎月20万円おりることに

ただ家賃は105000円
母に渡す7万円はなくなったが
その他固定費を入れると
それでもなかなかキツイ数字


でも母に渡すお金がなくなったことで
お金のプレッシャーが格段に減り
私はおじいさんと会うのを
徐々に減らし関係もフェードアウトさせた




それまで私を縛っていた
色々なものから解放され
穏やかな日々に変わる


だけど
壊れた心はそうすぐには治らない




福祉事務所からは
規定なのでなるべく早く
家賃が69800円以内の
ところに引っ越すように言われるが

生活保護の規定では
日本全国69800円以内の家賃に住むという
決まりがある




これがおかしな話なんだが
地方の田舎も都内も
同じ家賃設定の金額なのだ



だけど小さな子どもふたりを
首都圏で家賃69800円の家で育てるとか
そんな物件どこにあるんだ?!というくらい
そう簡単には見つからない



そして見つけてみても
シングルマザーは
保証人の部分でいつも困る




保証会社もあるけど
シングルマザーということで
親が保証人じゃないと・・・
というところがほとんどで
親といえば無職のあの母しかいない私は
母が保証人にはなれない



あるとき
保証人をお願いしようと
久しぶりに父に電話をしてみた



父の後妻の件で(波乱だった過去49)
多少連絡しずらかったが
「父さんは沙織のことを大切に思ってる」
というあの時言ってくれた言葉を信じて
私は最後の頼みの綱で連絡をした




すると
電話に出て早々

「なんだ?」

とムスッとした父の声



「離婚してしまって
家の保証人になってほしくて・・
頼れる人誰もいなくて」



すると

「母さんがダメって言ってるからダメだ」

ガチャ!

と電話を切られてしまった





久しぶりにかけた電話だったが
私が離婚したことすら
全く気にもせず

声から感じる雰囲気はまるで

”なんで連絡してきたんだ”

というあからさまな
迷惑そうな声






この時に心底思ったこと


”親でさえも去っていく
親でさえも裏切る”


そんな深い傷が私の心に根を張った




あれだけ私に笑顔で近づいて来た父の後妻も
裏では私を嫌い恨んでいた



それでも
「俺は沙織を愛してる」
と言ってくれた父も
結局は私を捨て
新しい家族だけが家族と言わんばかりに
もはや私を見向きもしない




こんなにも辛く苦しく
悲しいことはなかった


恋愛で失恋するよりも
友達に裏切られるよりも
そんなの比にならないくらい
私にとって
父と父の後妻にされたことは
深い深い傷となりトラウマとなった



”大人なんて笑顔で近づいてきても
腹の底では何を思ってるかわからない
親だろうと平気で裏切るし
平気で傷つけて笑って暮らしてる”



これはまさに
今私が相談に乗ってる子たちのほとんどが
大人に対して感じていることと同じ






結局私は部屋の引っ越しができないまま
この家で生活保護を受けながら
子どもたちと生活を続けた



もうバイト代は払ってなかったが
たま〜〜〜に母が来たり
お婆ちゃんが来る


そんな日の深夜は
唯一の息抜きとして
レゲエ仲間とCLUBに行く



週末に野外でイベントがあれば
子どもたちも連れて行ったり

それが唯一の楽しみだったこの頃




ミクシィで弱音を吐くと
仲間の誰かが励ましてくれる


そんな繋がりが
この頃の私にとって
唯一の社会との繋がりで
唯一の誰かとの繋がりだった





色んな世代の色んな仲間がいたけれど
同じように悩み苦しんでる仲間もいた


主婦だけど精神薬をもらって飲んでる人
頑張って社会でやってるけど悩み苦しんでる子
いつも楽しく本当に明るい元気な人

本当にそこには色んな人がいた





レゲエの現場には
中学の同級生も
イベントをしていて
音好きの私には
そんな再会も憩いの場だった



馬鹿正直な私は
自分が生活保護で生きてることも公表していたが
そこから早く抜け出して
普通に生きていきたい気持ちもよく吐露していた





苦しくて
寂しくて
そして自信がなくて

仲間も子供も居ても
行き場のない思いは
なかなか癒されることがなくて・・・





仲間の中でも特に仲が良かった
信頼する男友達に
私はよく相談をしていた


「どうやったら自信が持てるの?」
「どうしたら幸せになれるんだろ」
「今私はどうしたらいいんだろ」



その友人は色々応えてくれたが
その中でも未だに心に残ってるのは


「ん〜〜、だけどさおりんは強えーよ!
自分で思ってるより強いからね」


という言葉





この頃は今のように
自分の過去も何も話してないけど
”私はとてつもなく弱い人間だ”
と信じて疑わなかったから


だから
「さおりんは強いよ」
という言葉が私には意味がわからなかった




けど今なら
彼の言ってた意味がわかる気がする