第65回

波瀾だった過去65 壊れていく心

会社を経営されてる
人のいい優しいおじいさん


その方の運転する高級外車に乗って
美味しい食事をご馳走になった後
私はその方の言われるままに
ホテルに行った




そう
私は結局
お金のためだけに

人としては好きでも
異性としては見られないその人の
言われるままに
自分を売った




1〜2時間
ただひたすら時間が過ぎるのを待つ


そんな我慢と苦痛の時間



事を終え
8万円渡される




”これで母に渡すお金はどうにかなった”



惨めな気持ちと
安堵の気持ちが入り混じる





このことを打ち明けたのは
過去にたった3人だけ



そのくらい
私にとってこのことは
心に大きな影となっていた




もちろんこうして
このブログに書くということも
今家族が増えた身として
正直戸惑いはあるが

私の人生を語る上で
これを語らないのは
この活動をしていながら
隠し事をしているようで
それはそれで自分に納得いかないので
全て公表しています




この方とは週に一回
仕事を早く終えられる日に合わせて
私はお金のために
関係を続けた




毎回残る
罪悪感と虚無感と
惨めな気持ち・・・


そしてほんの少しの
お金の安堵感




この方のおかげで
私は支払いを滞ることはなく
生活を続けられた




ただ
自分の中に

”なにやってんだろう”

という
子どもたちへの
背徳感のような
罪悪感のような
そんな気持ちが

自分で抱えきれないほど
苦しかった





そんなある日
紀子と久しぶりに会うことになった


六本木で遊ぼう!と
食事をした後
カラオケへ



久しぶりにふたりで
楽しく歌ったり騒いだりしながら
気づいたら歌ではなく
語り合っていた



外は賑やかな六本木

そんなギラギラと賑わう街の
ど真ん中のカラオケの部屋で
私たちは静かに色々語った



昼間の仕事を頑張ってる話や
お互いの近況報告を色々話しながら
紀子からひとつ打ち明けられる


「今、実は〇〇さんと付き合ってるんです」


私はびっくりした


その人は組長の一番の舎弟分の人で
私も仲良く話をしてた方だった



「ウチに一緒に住んでる感じで
ほとんど今一緒にいます」



そのふたりが付き合ってるなんて〜〜♡と
いつのまに?!という気持ちで
私は普通にびっくりしたが
紀子が幸せなら!と祝福した



その方は色々問題が多かったのか
よく指を組長に進呈していた人だったが(笑)
いつも気さくに話してくれて
優しい方だったので
特に何も心配をすることはなかった



ただ同じように
夜の仕事を辞めて
昼間の仕事を頑張ってる紀子を見れて
私はそれで嬉しかった




そんな紀子に
私は心に溜め込んでる感情を抱えきれず
打ち明けた



「私ね・・・
打ち明けるのすごい勇気いるんだけど・・・
最低なことをしてるんだ・・・」



紀子は不思議そうに話を聞いた



「お金のために
好きでもない人に
自分を売ってる・・・」



そのお客さんのことも
もちろん紀子はお店にいた時に知っている



「あーー、あの人!
意外ですね・・・」



今となっては
こんなブログで不特定多数の人に向けて
自分の全てをさらけ出しているが
この時の私は
本当に本当に
やっとの思いで打ち明けた
カミングアウトだった




「沙織さん
紀子は、今まで自分の身体を売るようなこと
いっぱいしてきて・・・
本当にいっぱいしてきたから
沙織さんみたく
思いつめたりすることはなかったけど
うまく言えないけど
話してくれてありがとうございます」



紀子はまるで
精一杯の気持ちで伝えるかのように
言葉を選びながら
私に言ってくれた



そして紀子は
優しい笑顔で

「沙織さん
紀子にとって
沙織さんは何も変わらないです

沙織さんは
紀子にとって変わらずお姉ちゃんみたいだし
大切な友達です」




「うまく言えないけど
どんな沙織さんでも
紀子は大好きです」



私は溢れそうな涙をこらえながら
紀子の存在に感謝しかなかった




親友とかいない
いつも一人で生きてきた私にとって
紀子のこの時の言葉や
紀子とのこの時間は
今でも忘れられない宝物だ





そのあとも
営業の仕事を頑張りながら
週に一回その方に会い
どうにか私は生活を成り立たせていた


私にとって
子どもたちの無邪気な笑顔だけが
この時の唯一の支えだった




紀子からも

”沙織さんが、昼間の仕事頑張ってて
紀子も嬉しいです!”

そんなメールが届く


”今度、会社のお菓子持ってくから
食べてね〜〜!”


そんなメールをやりとりをして
改めて
紀子の温かさと存在が
嬉しくてたまらなかった




その数日後
知らない番号から着信が鳴る



「もしもし、〇〇だけど
沙織ちゃん?!」



「あ!!!久しぶりです!!!」


紀子と付き合ってる〇〇さんからだった



「沙織ちゃん・・・・
紀子が・・・・・・
紀子が・・・・・・

自殺した」





目の前が真っ暗になって
携帯を持つ手が震えた