第56回


波瀾だった過去56 組長との出会い

キャバの時とは違う
なんだか突然押し寄せてきた
モテ期と口説かれ方に困惑しながら
私はそのお店でいつのまにか
目立つ存在となっていた
 
 
 
後日Fさんがお店に来て
私を指名した
 
ママが大喜びで私を呼ぶ
 
 
聞けば、Fさんがお店の女の子を
誰か気に入ることはなかなかなくて
自ら指名で呼んだのは初めてだったそう
 
ママは嬉しそうに
「Fさんが呼んでるわよ〜!やったわね!」
と私を席につかせた
 
 
どうやら私は
本当にFさんに気に入られたらしい
 
相談しただけでなぜ気に入られたのか
今でもさっぱり分からないが
そんな超VIPのお客さんに気に入られたことは
その頃の私にとって大きな自信にもなった
 
 
 
Fさんの席についてしばらくすると
4〜5人の団体が入って来た
 
 
ママがすぐさま飛んでいく
 
 
「いらっしゃいませ〜〜〜♡」
 
 
Fさんも、あ!っという表情をしている
 
 
黒づくめのスーツを着た
見るからにそっち系の人たち
 
 
組長さんに気に入られ
そっちの人たちと関わりがあったのは10代の頃
 
 
友達のKも
この前助けて来れたYさんも
カタギではないけれど
生粋のそっちの人たちではない
 
 
見るからにそっち系のオーラを放つ人を見るのは
久しぶりだった
 
 
”やくざやさんも来るお店なんだ〜”
 
 
そんな風にしか思わずに
私はFさんと会話を続けた
 
 
 
「この前はありがとうございました
おかげさまでお断りできました」
 
 
Fさんに言われて勇気を出して断ったが
Fさんの言ってた通り
な〜んてこともなく事なきを得た経緯をお伝えした
 
 
Fさんが温かい笑顔で微笑みながら
「そんなもんだからね〜
でも俺は本当に言ってるよ」
 
 
冗談が通じない私は一瞬戸惑ったが
Fさんの人柄には人として好意を感じ始めていたので
拒否する気持ちもなく
私も笑顔を返した
 
 
 
「沙織ちゃ〜〜ん、ちょっといいかしら〜
Fさん沙織ちゃんお借りするわね〜」
 
ママが私を呼ぶ
 
 
「沙織ちゃんWさん初めてよね」
 
 
その団体さんの席に私は呼ばれた
 
 
「Wさ〜〜ん、新しい女の子よ!
沙織ちゃん、よろしくね〜」
 
 
ママは見るからに貫禄のある
一番イカつい男性の隣に私を座らせた
 
 
「おー、座れ」
 
 
どうやらかなりの常連さんのようで
ごっつい貫禄とは裏腹に
わっはっは!と笑いながら楽しそうに飲んでいる
 
 
「お前はなんでこの店きた?」
「今いくつだ?」
 
Wさんというその人は
新しく入った私に色々な質問をしてくる
 
 
かなりの常連さんなので
新しい子にちょっかいを出してる
そんな感じなのだろう
 
 
「結婚は?子供はいるのか?」
 
隠し事が嫌いなバカ正直な私は
もちろん正直に話す
 
「バツイチで子どももいます」
 
Wさんは、正直な私に一瞬
「おっ」という顔をした
 
 
なんとなくの勘だけど
私はWさんに気に入られたと感じた
 
 
「お前には名刺渡しておくわ」
 
 
指定暴力団でもあるI会の
幹部も兼任している組長さんだった