波瀾だった過去57 ナンバーワンの洗礼
キャバクラとは違う
久しぶりのハイクラスな接客に
最初は私も緊張していたが
指名が取れ始めると
ママの対応もどんどん良くなり
少しずつ少しずつ
私はお店に慣れていった
そして気づけば週3の予定が
週5で入るレギュラーに
同い年の女の子とひとり仲良くなって
集団の苦手な私も孤立することなく
常連のお客さんも私を気に入ってくれる人が増えて
私は改めてお店を移ってよかったと
そう感じていた
そして私が入って間も無く
22歳の若いギャル風の女の子が入店してきた
紀子(のりこ)というこの彼女は
お店には似つかわしくないギャル風の子で
事実浮いていたけど
私は彼女が気になって仕方なかった
腕には無数の根性焼きの痕
口調もギャルだし明るいし
頭の回転も早いから
話は実に面白い
だけどハイクラスなお客様には賛否両論で
面白がって気にいる人もいれば
あまり相手にしないお客様もいた
実際お店の姉さん達も最初は引いていたし
あからさまに無視する人もいたくらいだった
だけど私には紀子が純粋で繊細な子に思えて
勝手に妹のように感じていたのだ
ある日アフターが一緒になった日
私は紀子に
「死にたくなる時ない?
ツライ時死んじゃおうかな〜とか
思わない?」
と聞いたことがあった
「なんでわかるんすか〜〜!!」
紀子はびっくりした顔で言っていたが
全然すごいことなんてなくて
ただ私は紀子に
自分と同じ匂いを感じていただけだった
数ヶ月後もっと仲良くなってから
あとで紀子に聞いた話だが
「あの時友達に
”新しいお店に紀子のこと
なんでも見えてる人がいて
怖いんだよね〜〜!”って相談してたんすよ!」
と言われたくらい
紀子にはびっくりしたことだったらしい
「ただ、私と同じ匂いするだけだよ。
似てるな〜って、そう思っただけよ」
そういう私の顔を不思議そうに見ていた紀子は
本当に可愛い妹のようだった
お店では色々なお客様が
私を指名で呼んでくれたけれど
お店でVIP待遇を受けていたFさんは
月に1〜2回ふらっと閉店間際に来て
必ずみんなで姉妹店にアフターになる
そしてW組長は
週に少なくて3日
多いと4〜5日来るほどの超常連さん
2〜3人を指名で呼んでくれるのだが
私は組長に気に入られたのか
毎回呼んでもらっていた
ひとりで来ることもあれば
2〜3人の舎弟分を連れて来ることが多く
時には若い衆7〜8人を連れて来ることもあった
当時50歳くらいで
身体が大きく、黒のスーツを着て
どこから見てもそっち系の
親分そのものの貫禄ある人だったが
時々見せるお茶目な面が可愛く思えてしまう
そんなチャーミングな人だった
組長はこのお店で
最近まで付き合っていた女の子がいたらしく
別れて間もないこともあり
新しく彼女を探しているようだった
組長は最終的に3人の女の子を気に入ったようで
気づけば毎回3人が呼ばれる形で落ち着いた
私と紀子と、もうひとりは
過去に別のお店でママも経験したことがある
生粋の夜の女性で私より2〜3つ年上の
姉さん!って感じの女性
この3人を
組長はお気に入りとして毎回呼んだ
おもしろいくらいに全員キャラが違う3人
若くて面白いギャルの紀子
たまに毛皮なんかも着て来る夜の女王の姉さん
そして私
この頃は5歳児の本当の素の自分が出ることは
普段からほとんどなくて
キャラ的には落ち着いたイイ女風だった気がする
飲んで騒ぐことも10代から元々ない
落ち着いて笑顔で話を聴くことだけが取り柄の
そんな女だった
髪も長く
よく「女子アナっぽい!女子アナにいそう!」とか
「着物が似合いそう!演歌歌手っぽい!」とか
そんな風に言われていた笑
そのお店では特別なVIP待遇のお客様は3人いて
FさんとW組長とUさんという社長さん
Uさんは超大物俳優の弟分で
運転手付きで2ヶ月に1回くらい飲みに来る方
振り返れば私は
お店のVIPの皆さんから可愛がってもらえていた
大田区にある老舗のクラブだというのに
アメックスのブラックカードや
ダイナースのブラックカードが
普通に出て来るお店で
チタン製のブラックカードなるものを
初めて手にして見たのはこのお店だった
そんなUさんは運転手さん付きの同伴で
西麻布のミシュランのお店に
いつもお財布が一万円札で2cmくらいになってるFさんは
プライベートでもお食事に行く仲になり
組長も運転手付きのプレジデントでお食事に連れてってくれたり
週4〜5日でお店で呼んでもらっていた
それまでの7年間
ただの普通の主婦だった私が
気づけばそんな毎日を送り始めていた
それまでどんなに甘えたくても
受け止めて欲しくても
旦那さんは無関心な人で
子供の頃から持ち続けている私の心の穴が
旦那さんとの結婚で埋まることは一度もなかった
旦那さんから外見を褒められたことなんて一度もないし
どんなにお洒落をしても
どんなにお金をかけても褒めてもらうことはなくて
むしろ「もうオバサンじゃん」と言われるだけだった
そんな7年間で自信を完全に喪失していたから
突然色々な男性に褒められるようになって
しかも皆さん地位のある方という状態に
自分でも何が起きてるのか分からない時さえあった
私がそんな忙しい毎日を過ごし始めて
元旦那さんとは喧嘩する時間もなくなったけれど
相変わらずただの同居人のような
そんな毎日
ある時、Uさんが
その超大物俳優さんがお気に入りという超高級お肉を
自宅に送ってくださったことがあった
子供たちも元旦那さんもおばあちゃんも
「美味しい!美味しい!」と大喜びで食べている
”私が夜のお店で働いて
そのお客さんにもらったお肉を
この人は何も思わず嬉しそうに食べるんだな〜”
と、籍だけを抜いた状態の旦那さんを見て
”この人は私に対して本当に愛情がなかったのだな”
と改めてそんな風に思った。
そして週5で出勤して働く毎日の中
入店して3ヶ月後
私はお店でナンバーワンになり
表彰された
それが
このお店の洗礼だなんて知らずに・・・