波瀾だった過去・49(人間不信)
2人目を妊娠したものの
長男の時同様、いやそれ以上の
猛烈なツワリに襲われた
お医者さんに言われて点滴に通ったが
一向に改善されない
それどころか
点滴に通うことすら
私にとっては修行のような
やっとこさな行動だった
2人目ということもあり
旦那さんも長男の時より
優しく理解ある対応をしてくれた
「何か食べたいものある?」
そんな風に毎日
買い物にすら行けない私を
気遣ってくれたのだ
だけど、そんな優しさは
1ヶ月経つ頃には消えてしまう
「帰って来て散らかってると
疲れが取れないんだよ!!!」
「そんなこと言っても仕方ないじゃん・・・
私も好きでこうなってるわけじゃなくて
ツラいんだから・・・」
イライラと怒りながら
「いつまで続くんだよ!!!」
と怒鳴られ、私は
”やっぱりこの人とは一生いることはないんだな”
と、そんな風に思った
「鬼だ・・・」
と、そんな風にさえ思った瞬間だった
そんな状態で父のところにも
頻繁に行けなくなったが
母の日にはお母さんに贈り物をしたり
妹とも弟とも連絡は取っていた
この頃、私は30歳
次男を出産した翌月に31歳となった
そしてまた、九州から
旦那さんのお義母さんが
一ヶ月泊まり込みで来てくれて
身の回りのお世話をして下さった
今回は4歳になる長男も居て
お義母さんも孫である息子と過ごせるのが
嬉しかったのだろう
この4年間も
私は旦那さんが行けなくても
息子を連れて2人だけで
年に一度は九州の彼の実家に行くようにしていた
孫に会いたいだろうな〜という想いと
息子も田舎があったら楽しいだろうな〜という想い
息子のお洋服とかを買ってもらえるという
下心も少なからずあったかな(笑)
そんな感じで
特別仲がいいわけでもないが
嫁姑の関係は悪くなかったので
こうして2人目の時も
一ヶ月居て下さったのは
本当に感謝でならなかった
相変わらず、その間も
一度も母が会いに来ることはなかったから
4歳になる長男にも
一度も会うこと無く
気付けば4年が過ぎていた
そして次男を出産した後
それまでの2DK(50㎡)のマンションから
川崎の新築の広い素敵なマンション(90㎡)に
引っ越すこととなる
南向きの日当りの良いサンルームがあって
目の前にはテニスコートと緑が広がっていて
今まで住んで来た家の中で
一番広く、一番綺麗で
一番最高な家だった
ずっと自分の部屋も無く
だけどインテリアとか模様替えとか大好きで
家や暮らしというものに大きな憧れがあった私は
その時ばかりは最高に幸せな数ヶ月だった
愛する可愛い子どもたちがいて
変わらず毎週おばあちゃんが泊まりに来て
イライラすることも減っていた旦那さんとは
まぁまぁ普通にやっていて
広くて綺麗で素敵なマンションに暮らし
それまでの人生で一番平和な時間だったと思う
そんなある日
久しぶりに父から話があるということで
その新居に会いにきたことがあった
「母さんが最近更年期で・・・
あまり機嫌も良くないから
しばらくそうっとしておいて欲しいなと思って」
「もちろん!わかったよ^^」
私は普通に笑顔で答えた
「まぁ、電話とか連絡も控えてもらえると・・・」
「うん、わかったけど・・・
お母さん、大丈夫?」
そんな会話を少し繰り返した後
父が重たそうに口を開いた
「本当のことを言うとな、
母さん沙織のことがずっと嫌いで・・・」
私は一瞬、耳を疑った
「え・・・・・?」
「母さん、ずっとお前のこと憎んでて」
頭の中が真っ白になった
「3年前、お前を初めて呼んだとき
帰ってから沙織が来るって話したら
それはそれは母さん怒ってさ」
「なんで別れた、前の女の子どもが来るのよ!って」
「沙織も俺の子だろ!って母さんと喧嘩になって
あのときは離婚問題にまで発展したんだよ」
「え?だってお母さん、実家だと思って
いつでもおいでって、私に・・・」
「あぁ、しばらく離婚だなんだと揉めたけど
結局最後は母さんが納得してくれて
沙織を呼んだんだ」
「母さんも努力しようと無理してくれてたんだよ」
私の中で、お母さんと夜な夜な語ったことなど
その3年間の会話や笑顔が頭を駆け抜けた
そんな素振りなんてこれっぽっちも見せること無く
感じることもなく過ごしてきた3年間
「さおちゃんを引き取ってたら
どうなってただろうね〜」
「実家だと思っていつでも来て」
「実家だと思って、お母さんだと思ってね!」
お母さんに言われ続けた言葉と
その時の笑顔が脳裏を巡る
だけど、もう訳がわからなすぎて
私は震えていた
「お前が泊まりに来るだろ。帰った後は毎回
「あの子のあの言葉は私への当てつけだ!」とか
「あの態度は私を馬鹿にしてるんだ!」とか
沙織が帰った後は、いつも怒って文句を言ってたんだ」
もうそれ以上聞きたくはなかった
あまりのショックと衝撃で
私はもう涙しか出なかった
「そんなわけだから
今余計に更年期でイライラしてるし
しばらく来ないで欲しいんだ」
「いや・・・もう二度と行かないよ
二度と、お父さんの家には行かない」
そして涙を流しながら
私は父にひとつだけ尋ねた
「お父さんは、愛してくれてるんだよね?
お父さんは、私のこと
娘として愛してくれてるんだよね?」
父は頷きながら
「あぁ、もちろん」
そう答えた
私は、それまでの人生で一番
ショックな気持ちを抑えて
冷静を保とうと
大人の対応をした
「なら良かった・・・」
「お父さんが愛してくれてるなら
それだけで充分・・・」
父にも、自分自身にも
溢れて来る感情を抑え
そのことを早く忘れようと
必死で耐えた・・・
それまでも
人から裏切られたり
散々ツラい目にはあってきたけど
これほどまでに
人が怖いと思ったことは
後にも先にもない
これほどまでに
人間不信になったことは
後にも先にもなく
私にとっては
それほどのショックと傷だったのだ