第50回

波瀾だった過去・50(懐かしい再会)

それから私は
父とはなるべく連絡を取らず
妹とも弟とも連絡を絶った


やっと出来た兄弟
やっと出来た実家が
一瞬にして
悪夢のような
ツラい思い出となってしまった



とりあえず唯一の救いは
父とは縁を切らずにいれそうなこと

父は私を愛してくれてるという言葉


泣きながら
号泣しながら
父に問いかけた質問だったけど
それに応えてくれただけで
それでいい・・・と
必死で自分に言い聞かせた



そのあと
この父との再会が
私にとってもっとツラいものになるなんて
想像もしないで・・・




父の家族とは
縁を切ることになってしまったけれど
私には子どもがいる


最高に可愛くて
本当に良い子な
息子たちがいる


私にはそれだけが救いだった



だけど、この頃から
旦那さんの仕事に問題が起こり始める


共同経営していたパートナーと
金銭的に揉め始めたのだ


元々、パッと見は温厚そうだけど
実は短気な旦那さん


納得がいかないと
イライラとビジネスパートナーにも
罵声を浴びせたりし始めていた



私にもよく
「もうババアじゃん!笑」とか

「沙織の家は遺産いくらだっけ?
あ、そんなの無いか!笑」

とか、ウチの家庭事情を知りながら
傷つくことを平気で言う人だった



冗談を真に受ける私としては
そういうことを言われることが
本当に嫌だったし
「冗談だよ〜」と
笑って言うその神経が
全くもって理解できなかった


「冗談て笑えることを言うよね?
人が傷つくことを言うのは冗談なんかじゃないよね?」


そのたびに
「冗談も通じないなんて」と
イヤな顔をされて逆切れされたりもした



今となれば
私がアスペルガーだから
人一倍冗談が通じないということがわかるけれど

私にとっては
”ひどい冗談をいう思いやりのない人”で

旦那さんにとっては
”冗談も通じないやつ”
だったのだろうと思う


根は悪い人では無かったけれど
そんな人だったから
誰かと喧嘩になることは想定内でもあった


そもそも誰かと共同経営すること自体
揉め事が起こるのは良くある話だが
お給料を減らしたいという相手からの申し出に
旦那さんは納得がいかず
金銭的な問題で揉め始めた


収入が一気に数十万円減ると言う事態に
私も働かなければ!と
私はまた水商売を始めることにした



産まれてまだ
1歳になるかならないかの次男は
保育園にも入れていなくて
日中普通に仕事はできない


旦那さんが居る夜に子どもを見てもらいながら
私も仕事をするのがベストだし
一番手っ取り早いと
私は、20歳の頃のキャバクラの友人のツテで
彼女が働く地元のキャバクラで働き始めた


元々ヤキモチもなく
無関心な旦那さんだったので
”夜ひとりで子どもの面倒を見るのが心配だ”
くらいのこと以外は
特に反対もなく
私は夜の仕事に復帰した



この当時私は確か32歳



パパッと夕飯だけ準備して
20時には出勤する

”とりあえず週3日だけ”
と、そんな気持ちで始めた
水商売だった




そんなある日
そのお店でVIP扱いをされてる
お客さんの席に着かされた



「あれ?もしかしてKじゃない?」


私がイベントコンパニオンをしていた19歳の頃
良く行っていた地元のカラオケパブのような
楽しい飲み屋さんがあった


当時そこでナンパされ
何度か遊んで仲良くなった
ひとつ年下の男の子がいた


若いのに野心があって
風俗の店を自分で出したいと
よく言っていた男の子


その彼だった



「久しぶり〜!!!」

「お!懐かしいな!」


13年ぶりの再会にビックリしながら
私たちは再会を楽しんだ



聞けば、その後色々事業をやって
成功している様子


と言っても、表舞台の人でも
表舞台の成功でもなく
明らかに裏の世界ギリギリを
渡り歩いているような感じ


そのお店には週何回も来て
何十万も使う上客だったようで
お店としては逆らえないようなVIP客になっていた



「あの時の年下の男の子が
まさかこんな風になるとはなぁ〜」


私は時の長さを感じた




アラサーになって子どもも居て
久しぶりの水商売に
さすがの私も新人として緊張をしていたが
VIP客の彼を呼び捨てで話す私に
お店のスタッフも女の子も
それまでとはちょっぴり違う反応になり
彼のおかげで緊張もなく働けるようになった



その再会からまた縁が繋がって
そのKとはたまに食事をしたり
色々相談するような仲となった


そんなKと色々話していた時に
またひとり懐かしい名前が出て来る


「あの頃さ〜、沙織の店に行ったことあっただろ?」
「あの店によく行ってて沙織を知ってる人がいるんだけど・・・
Yちゃん知ってる?」


「わ!!!懐かしい!!!!」


そのYさんは
20歳の頃働いてたキャバクラに
よく指名で来てくれたお客さん


関西で元ヤクザ屋さんだったというその人は
なんだか謎が多い人で
1時間も居るか居ないかというお客さんだったが
一番高いボトルを入れては
結構なお金を使ってくれる人だった


何度か同伴やアフターにも行ったことがあって
当時は結構気に入ってもらっていた



「えーー懐かしい!元気ーーーーー?」
「っていうか、何で繋がってるの?」


聞けば、その後出逢って付き合いがあるそうで
私は、「久しぶりに会いたい!!!」と
Kにお願いをした



段々と昔の付き合いが繋がりだす




結婚生活では
何度かパートやバイトはしてたけれど
こんな風に男友達と遊ぶとかもちろんなく
私はそんな懐かしい再会が
ただただ楽しくなっていた



この夜の世界の復帰が
私をまた闇に引きづり込むとは
思いもしないで・・・・