第44回

波瀾だった過去・44(妊娠・結婚)

想われて付き合って
想われて結婚したほうが
幸せになるのかもしれないと
人生で初めての挑戦をしてみたものの
心が満たされることは
なかなか無かった。


だけど
早く家族というものが
欲しかった私は
なんとなく
結婚というものに
焦っていたようにも感じる。


3年前DVの彼に
なかば無理矢理
入籍をさせられた過去を
早く消し去りたいという
そんな気持ちもあったのかもしれない。


でも、なんとも言えない
満たされない想いがあったのも事実で
実際、ある日Hくんの自宅に遊びに行った時に
突然お友達が訪問してきたことがあって

「今、彼女が来てるんだよ、ごめん」

という彼の言葉を聞いて

「彼女・・・彼女なのか私・・・」

と、自分でもまだ認められない
なんとも言えない
複雑な気持ちになったことがあった。


こんなことを書いたら
何故そんな人と付き合ったんだと
言われそうだが
この頃の私は
ただただ

”愛してくれる人が欲しかった”

それだけだったのだ。


付き合ってすぐ
彼は友達に紹介したいと
私を飲みに連れてったことがあった。


その時に

「なんか、いつものHくんと違うじゃん!」

と彼の友達が言ったのを
訳がわからず聞き流してしまったけれど
彼がずっと私には素を見せずに
気を遣って良い人を演じていたのに気付いたのは
少し後になってからだった。



そんな状態にもかかわらず
私は付き合って間もなく
Hくんと一緒に住むことにした。


単純に、お給料18万円で
家賃8万円引かれることがキツかった
というのが一番の理由なのだが
付き合ってすぐに
そんな決断をした。


今までの恋愛のように
すごく好きな気持ちはなかったけれど
彼の草野球の仲間と飲みに行ったり
彼の仲間としょっちゅう遊ぶことが
寂しがりやの私には
大きな楽しみにもなっていて
彼と付き合うことに
大きな幸せはなかったけれど
淋しい想いだけはしなくて済むという
私にとってメリットがあったのだ。


そんな日々を過ごす中
私は自分の心をきちんと見つめることもせずに
早く家族が欲しくて
早く子どもが欲しくて
Hくんと結婚を前提に
付き合うことにし始めた。


そう決めて
2ヶ月ほど経ったある日
私は妊娠をした。


作っちゃった結婚と
私は言っていた。


事実、作ろうとして
意図して妊娠したからだ。


”今度こそ
子どもを産む!”

”今度こそ
普通に結婚をする”

そう決めていた。


国立にもたまに泊まりに来たりと
仲良しな祖母にも
真っ先にそのことを伝えたら
おばあちゃんは当初びっくりし
少し心配はしていたけれど
喜んで認めてくれた。


そして母にもそれを伝えるために

”結婚して赤ちゃんを産む”

と、久しぶりに電話をした。


が、帰ってきたのは

「なに言ってんの!」

「動物じゃないんだから!」

「妊娠したから産むって動物と一緒じゃない!」

「順序が違うでしょ、順序が!」


相変わらずヒステリックに
怒鳴る母。


産むために作ったんだと
計画的だったんだと言っても
聞いてはくれない。

「挨拶に来もしないで!」


挨拶に行くって言っても
認めてくれないどころか
そもそも挨拶の場を作ることも
会おうとすらもしてくれない人なのに
何を言ってるんだ・・・と
私はもう母に認めてもらうことを
一切諦めた。


こんなことは今に始まったことじゃなかったし
その前に

「あんたは動物か?!」

という言葉に
私はひどく傷ついた。


それまで
何度か妊娠を経験した私にとって
その言葉はひどく心をえぐられたのだ。


私は、母に認めてもらうことなく
出産と結婚を決意した。


本当の「愛」というものを
これっぽっちも知りもしないで。


ただ
「愛されたい」
「ずっと気にかけてくれる誰かが欲しい」
その一心で・・・