第36回

波瀾だった過去・36(彼の釈放)

  • ビューティーアドバイザーの仕事に就いてから
    毎日美容に気をつけるようにもなり
    常に女性として綺麗を意識しながら
    毎日を過ごすようになった。

    それまで、派手好きでメイクはしっかりしていたけれど
    女性らしさとか美しさを意識したことはなくて
    そんなことを意識し始めたのはこの頃。

    毎日カウンターに立ちながら接客する日々で
    遊ぶこともこの頃はほとんど無く
    たまに地元の同級生にドライブに連れてってもらうくらい。

    休日もゆっくりひとりで過ごし
    音楽を聴きながら大好きな掃除や片付けをする。

    しばらくして彼が留置場から拘置所に移り
    面会に行く頻度も減った。

    時々届く手紙に返事を出すくらいで
    毎日の仕事で彼とのことも
    普段は思い出さないくらいの生活だった。

    そんなある日、
    彼のお母様と拘置所に面会に行くことになった。

    小菅にある東京拘置所に着いて
    私は何とも言えない気持ちに襲われた。

    立ちはだかる一面の大きな塀。

    留置場とはまた違う閉塞感。

    まだ慣れぬお母様と、慣れない拘置所の空気感で
    私は緊張していた。

    お母様はまるでお嫁さんのように接してくれたが
    どことなく常に不満を抱えてるような人だった。

    家族の愚痴、彼の前の奥さんの愚痴。

    決してキツい方でもなくて柔らかそうな雰囲気なのだけど
    ネガティブというオーラを纏ったような方だった。

    面会では彼の裁判についての話。

    執行猶予になるか?ならないか?

    刑事事件に関する裁判の知識なんて皆無だった私だが
    この時に多少の知識がついたと思う(笑)。


    そんな日々を送った数ヶ月後
    彼の裁判の日。

    私は内心ドキドキしていた。

    彼が出てくることで、今の生活や人生が
    また変わってしまう気がしたから。

    もしかしたら、この時
    彼が執行猶予でなく懲役でも良いと
    内心思っていたのかもしれない。


    そして、出た判決・・・執行猶予。

    裁判を終えてすぐ、
    彼は執行猶予で釈放となった。