第2回

波瀾だった過去・2(祖父との厳しい日々)

ある日突然

ほぼ強制的に幼稚園を辞める形になった
幼稚園中退後
築何十年も経った猛烈ボロアパートの
四畳半一間の祖父の家に預けられ
そこで祖父とひいおばあちゃん
3人での暮らしが始まった





でも、ひいおばあちゃんは
毎日深夜近くまでパチンコに行ってしまい
ほとんど祖父と二人きり





四畳半一間のその部屋は
真ん中にコタツがあって
窓はボロボロで
開けることさえままならない



そのすぐ近くには
一年中敷きっぱなしでぺっちゃんこの
薄汚れた祖父のせんべい布団が常に敷いてある




私が寝るのはコタツ



座布団を布団代わりに

コタツで眠る






今なら1時間も居られないほど
全てがボロボロで不衛生で汚いその部屋で
私は幼稚園も行けずに暮らしていた









祖父は昼間からいつも焼酎を飲み
よくクジラベーコンを食べていて

NHKの連想クイズが大好きで
私はアニメはもちろん
何ひとつ好きなテレビなんて見せてもらえず
そのコタツでひとりお絵描きしたり

何もせずボーッと過ごす日々



そんな祖父だが頭のいい人で

私にも勉強はしっかりしてほしかったようで
小学校に入る前の私に毎日お勉強をさせた



だけど何故かいつも

私の頭にザルを被せるのだ



ザルを頭に被せられながら

4歳の私は漢字から計算問題まで

毎日勉強を強いられる


今でも忘れられないのが
「入るの反対は?」と聞かれ
私は自信満々に
「入らない♪」と答えた時の恐怖…



「違うだろ!」と
ザルをかぶせられた頭を
思い切り殴られる



何が間違いなのか
何故叩かれるのかもわからずに
ただ混乱する私




クエスチョンマークだらけの中
怖い!という恐怖が入り混じる



「入るの反対は出るだろ!」
若干4歳の私には
そんなの全く理解できない






そんなある日
たまに会いにやってくる母が
私にオモチャを買ってきてくれた


粘土で作るバーガーショップのオモチャ


色々な色の粘土があって

そのオモチャに入れると
バーガーができたりポテトができたりする


ある夜、祖父が出かけていて
珍しく自由な一人の時間を
そのオモチャで楽しく遊んでいた


なかなか会えない大好きなママがプレゼントしてくれた
私には宝物の大切なオモチャ



オレンジの粘土はバンズ
茶色の粘土はお肉

そしてグリーンはレタス


一色ずつ大切にオモチャに入れて

バーガーを作っては重ねていく


黄色はポテト

一本一本出てくる粘土を
赤のケースに入れると
マ○ドナ○ドのようなフライドポテトになる♫



色々作って出来あがっていくのが楽しくて
一人で嬉しくてニコニコ遊んでいたのを
今でもハッキリ覚えている



するとそこに祖父が帰ってきて


「こんな下らないオモチャで遊んでるな!!」


と、いつもの鬼の形相で

出来あがったバーガーやポテトたちを
片っぱしから潰してグチャグチャにしてしまった





すべての色が混ざり合い
もはや色なんて

そこにはもう無い・・・



その時の悲しみったらなかった





”せっかく作ったのに・・・”


”せっかく頑張って綺麗にできたのに・・・”



という悔しさと


”グチャグチャで、もうこれで遊べない・・・”
という悲しい喪失感



結局怒った祖父に
オモチャまで壊され取り上げられて
私は怖くて大声で泣くこともできず
ただ静かに涙だけこぼしながら


”人生には辛いことしかないんだ”


と、若干4歳で痛感した