第23回

波瀾だった過去・23(初めての充実した日々)

  • お金や地位のある人だけがチカラを持つ銀座の街が、私には合わなくて悩んでいた矢先、
    17の時に働いていた地元のお店関係の人から
    新しくお店を出すから来てくれないか?と声がかかった。

    当時まだキャバクラというものが出来始めた頃で
    18~23歳くらいまでの女の子たちが集結した
    地元のキャバクラ第一号店だった。

    全員オープニングのお店なら
    女子グループの苦手な私も馴染めるかと思い
    私は銀座を辞め、地元のキャバクラに移った。

    可愛い女の子もいっぱい居て、在籍40~50名程の
    地元では大きなキャパの店。

    なかなかグループに入れない私も
    そこでは入店してすぐに友達も出来
    すぐに指名ランキング2位に入った。

    ナンバーワンの子とも仲が良く
    私と彼女は常時指名のお客様が3~4組いらしてる状態で
    多い時は10組近いテーブルを廻るような状態。
    ある時お客様から
    「〇〇(ナンバーワンの子)は飛行機で、詩織(私の源氏名)は新幹線だな。
    来たと思ったらすぐ居なくなっちゃうんだから」
    と言われた程、彼女は3分、私は5分しか席にいられない接客で
    毎日休むこともできず大忙しだった。

    みんな歳が近く仲良くて、お客様も若い人が多く
    それまでヤクザ屋さんか銀座のオジさん達しか接客してこなかった私には
    まるで学校のサークルのようで楽しくてたまらなかった。

    お店の女の子と旅行に行って女だけの旅行を初めて体験したり
    毎日深夜まで仕事をした後に、仲のいい子達と遊びに行ったりお泊りに行ったり
    お客様も変な人は居なくて、アフターも楽しくカラオケとか
    そんな風に初めて毎日が楽しい!と思える日々を過ごした。

    世田谷で初めての一人暮らしも始めて
    それまで自分の部屋を持てたことがなかった私には
    自分だけの部屋、自分だけの空間が幸せすぎて
    インテリアに凝ってみたり、
    唯一のお休みの日には好きなビデオを借りて
    一晩中居心地の良いお部屋で映画鑑賞をしたり
    それまで体験したことのない
    お友達も生活も充実した
    そんな毎日だった。

    見た目はジュリアナ大好きな派手なルックスだし
    指名も毎月かなり取っていたこともあり
    ナンバーワンの彼女と私は
    かなり威圧感のある二人だったと思う。

    誰も逆らう子はいないし、お客様も増えていく一方で
    休んでしまって指名のお客様が来てしまったらいけないと
    月イチも休めないような状態だったけれど
    それはそれで充実した日々だった。

    ちなみに前回書いた例の芸能人から、その後もしばらくお誘い電話が続いたが
    お店も休みたくないし、あの時のことがあり、一切断り続けた。



    そんなある日、ナンバーワンの子とご飯をしていたら
    何人か彼女の男友達が合流したことがあった。

    その中に居た同い年の男の子と仲良くなり
    私はお付き合いをすることになった。

    元暴走族の見るからにヤンキーな彼だけれど
    話し方も優しく面白くて、すぐに仲良くなったのだ。

    付き合って間もなく、一緒に住むことになり
    私はそんな絶頂期のお店を辞めることにし
    彼の家に住むために、一人暮らしの自宅も出ることにした。

    お店では盛大に退店のパーティをしてもらい
    多くの花束を頂いて、最後の日は号泣の末お店を後にした。

    みんな誰もが、私が幸せになると思っていたし
    私もそう思っていた。


    それからすぐに、恐怖の日々が始まるなんて誰も知らずに・・・