第13回

波瀾だった過去・13(自殺未遂)

  • 年齢を偽り、ヤクザ屋さんしか来ないキャバクラで働き、
    ドラッグでボロボロになっていく心と身体。

    たまの息抜きは集会(暴走族)か、
    違法なゲーム屋さんでのポーカーやフルーツ、
    そして彼とのパチスロ。

    誰からも愛されなくて、必要とされてなくて、
    同じような環境の友達が出来ても、裏切り合い、利用し合い、
    目の前の人がいつのまにか敵になってるような毎日だった。

    頭の中には「死」。

    この頃から、ドラッグして抜けた後にリストカット、
    というのが日常になっていった。

    でも、痛いの嫌いで怖がりな私は、
    ちょっとしか切れない(笑)

    ただの切り傷。

    そんな自分にも情けなくなる。

    「何で生きてんだろ。。。」

    そんな時、後輩から
    「腎臓売ると100万円貰えるらしいですよ!」
    って言われ、二人で「売ろう売ろう!」なんて
    本気で話していたこともある。

    自分の心どころか身体も、
    自分の存在に何一つ価値を見いだせなくて、
    100万円貰えるなら喜んで♪っていう気持ち。

    今、笑い話でそんな過去があったなぁと、
    たまに人に話すとビックリされるが
    普通の人は、そんな話も来ないどころか、
    売ろうなんて思わないらしい。

    もちろん、今の私は自分が大好きだし大切だし、
    そんなこと愛する人に移植でもない限りやらないけれど、
    17の私には、自分の身体の価値も命の価値すらも
    わからなかった。

    だけど、そんな私にもひとつだけあった楽しみが
    「音」。

    15からディスコに通い始め、
    音の波の中に居るのが何よりの歓びだった。

    とにかく音楽が好きで、音に関して雑食な私は、
    ユーロビートでもRockでもREGGAEでもMETALでも
    身体の奥が爆音で振動するような音なら
    喜んで聴きにフラフラ出歩いた。

    だからツラい事があると、大好きな音をテープに詰め込んで
    ひとり「海」を見に出かけては、生きてる意味を考えてみたり、自分は何でこんな人生を送ってるんだろうと
    海を見ながら「死」について、よく考えていた。

    そんな17のある日、
    私は親友だと思っていた中学からの友達に裏切られた。

    その悔しさツラさで彼に甘えたくて連絡をしても、
    パチスロでろくに相手をしてくれない。

    自分の周りに誰も居ない淋しさ、
    小学校の頃からの
    「なぜこんな淋しい思いして生きてるんだろ」って想い、
    「いつ死んでもいいや」っていう投げやりな想い、
    そして「私なんか死んでも、どうせ誰も悲しまない、
    誰も泣いてくれる人なんて居ない」という想いから、
    この日私は家中にある薬を全部飲んだ。

    シートになってるものも瓶に入ったものも、
    片っ端から飲みまくった。

    薄れていく意識の中、
    私はひいおばあちゃんが呼んだ救急車で病院に運ばれた。

    救急室で色々何かされてるけど、
    記憶も意識もほとんどない。

    ただ、鼻から口から管を色々通されていた。

    そして、目が覚めたらベッドにいた。

    猛烈な吐き気で目が覚めたのだ。

    どうやら胃を洗浄されたようで、
    この時の猛烈な吐き気の連続は、
    のちにかかった胃腸炎に勝るとも劣らない。

    一晩中、吐き続ける私のそばには
    ひいおばあちゃんが居た。

    そして数時間後、母が来た。

    「さおちゃん、大丈夫?何、死のうとしたの?」

    そんな風に言いながら30分か1時間は居たのかな、
    とにかく嘔吐嘔吐で私は話せる状態ではなかった。

    1時間くらいして母が
    「じゃあ、ママもう仕事行くね」と言って帰って行った。

    今でも忘れない。

    『私が死のうとして、こんな状態でもお店行くんだ?!
    こんな日でさえも、私のそばには居てくれないんだ?!
    やっぱり私は、この母には愛されてないんだ!
    これでよくわかった・・・

    居ても居なくてもどっちでもいいんだ・・・』

    そんな風に嘔吐の連続の中、感じたのだ。

    その後、看護婦さんが私の様子を見に来て、
    私にこう言った。

    「人間、そう簡単には死なないのよ」

    この時の、看護婦さんの言葉は今でも忘れない。

    この言葉から私は、
    人間はそんなに弱い生き物じゃない、
    そう簡単に死なないくらい本当は強いのよ
    って意味を、勝手に感じ取った。