波瀾だった過去・70(目覚め)
ビルから飛び降り
自分が地面にたたきつけられることを
リアルに想像する
ただもう死にたくて
ただもう消えたくて
この人生を消し去りたくて
この自分自身を消し去りたくて
母から
「あんたなんか産まなきゃよかった!」
と言われ
”自分なんか死んでしまえ”と
自分の存在を呪った10代の頃
あの頃の死にたい気持ちが
完全に戻って来てしまった
だけどあの時と違うのは
子どもたちがいるということ
簡単にドラッグや何かに逃げたり
死ぬなんてできないという
重い責任感が私を生かしていた
ただ身内からの理解はなくて
唯一の理解者であるお婆ちゃんでさえも
「鬱ってなんだよねぇ
ただの怠け病にしか見えないけどね」
そんな風に言われるくらい
理解はなくて
それがまた
”早く元気にならなくちゃ!”
と自分を追い込んでいく
でも私は
長男には伝えていた
「ママ何もできなくてごめんね
ママね、鬱って言って
心の病気になっちゃって
だから元気ない時あるけど
気にしないでね」
当時7歳だった長男は
何も言わずにただ理解をしてくれた
そんなある日
私は知人に車を借りて
子どもたちと城南島に行った
城南島は地元大田区にある埠頭で
海に面したそこは
羽田に着陸する飛行機が
頭上スレスレで通る海辺の公園
飛行機好きで海好きなので
ふと思いつきで
子どもたちと出かけてはみたが
でもやっぱり気づくと
ボーッとしてしまう
訳もなく泣きたくなってくる
「そろそろ帰ろうか?」
そう言うと
長男が後ろ手に何かを隠しながら
ニヤニヤしている
なんだろうな??と思いながら
自宅に帰ると
長男が笑顔で
「ママ、これ!!!」
そう言って差し出したのは
クローバーだった
3つ葉のクローバーに
セロハンテープで一枚葉っぱを貼った
手作りの四つ葉のクローバー
"これを作るために
ずっと隠してニヤニヤしてたんだ・・・"
私は言葉にならない感動で
胸がいっぱいになった
子どもにこんな気遣いをさせてること
子どもがこんな応援してくれてること
涙をこらえながら
笑顔で
ただ笑顔で
「ありがとう!」と
息子を抱きしめた
”生きなきゃ・・・”
”元気にならなきゃ”
これほど
生きなきゃと思ったことは
後にも先にもないかもしれない
そんなある日
ミクシィで仲良くなった人から
音好きならオススメのイベントがあるよ
ということで
あるBARのライブイベントに誘われた
それまでまともな外出は
レゲエイベントくらいだった私は
完全にアウェーなそのBARに
半分不安で半分ドキドキな気持ちで
出かけていった
西麻布にあるそのお店は
有名なミュージシャンたちが集まり
週末は演奏が聴けるそんな場所だった
即興で始まるセッション
その道では有名なミュージシャンの人たちが
その場の空気で
アイコンタクトで演奏をする
私は鳥肌が立った
深夜まで続くイベント
誘ってくれた知人は終電で帰ってしまったが
私はまだまだ聴いていたくて見ていたくて
ひとり残ることにした
誰も知らない
そんな完全にアウェイな場で
本当は緊張していたけど
ずっとそのセッションを見ていたくて
私はひとりで朝まで残ることにした
「ひとりでいるの?
なら、こっちおいで!
一緒に飲もうよ!」
そう声をかけてくれたのは
セッションに出ていたギタリストの方
私はビックリした
その方は
私が中学生からずっと聴いていた
大好きなバンドのギタリストさん
セッションの合間に
その方は気さくに声をかけてくれた
みんなで飲んでる輪に招き入れてくれて
私はみなさんの温かさにまた感動した
そして数分後
またセッションが始まる
即興で始まるその演奏に
ただただ感動しか出てこない
”楽器が会話してる”
”楽器って会話するんだ!”
私には
楽器同士が
会話をしてるような
楽器同士が
意思疎通をして
この演奏を奏でてるように感じて
鳥肌と感動と
一晩中そんな気持ちに包まれ続けた
”私・・・・何やってたんだろ”
ふとよぎった自分への言葉
それは決してネガティブな嘆きではなくて
”世の中には
こんなに素敵なことが
繰り広げられてるのに
私は狭い世界で
何をずっと悩んでるんだろう”
という冷静かつ目覚めの感情
子供たちとの時間は宝物
レゲエの現場も大好き
だけど気づけば私は
その狭い世界の中だけで生きていて
その世界の中で悩んでいた
”外に出たら
こんなに感動的なことがあるのに
私はなんて狭いところで苦しんでたんだろう”
自分が狭い世界で四面楚歌になり
その中で死ぬほど苦しんでいたことに
まるで目の前の霧が晴れたように
冷静に感じた
現実的には何も変わってないけれど
私の中の何かが変わった
何かが目覚めた
そんな瞬間だった
しばらくそのお店にも
そのギタリストの方にもお会いしてないけれど
「SNSを見て応援してるよ」
、著名な方なのに
今でも応援してくださるその方には
本当に感謝しかない
私が復活する大きなキッカケをくれた
大切な方のひとり