子ども食堂

日本では、子どもの6人に1人が貧困状態にあります。
その背後にあるのは、家庭の貧困であり、親たちの貧困です。
とりわけ、ひとり親家庭の貧困率は50%を超えており、深刻な状況となっています。
経済的な理由から、家で満足な食事を取れない子どもに暖かい食事を提供する――。
趣旨に賛同した地域のボランティアや子育て支援などに携わる大人が運営に参加し、こども食堂は社会運動のトレンドになりつつあります。

地域の子どもに無料か安価で食事を提供する「子ども食堂」や同様の取り組みをする場所が、5月末時点で少なくとも全国に319カ所あることが朝日新聞社の調査でわかりました。

営業日も月2回や、週1回、2回など、場所によってまちまちです。
時間は大体の所が、学童保育時間の終了に合わせて立ち寄れるような時間設定、もしくは土日にひとりで過ごす子供に合わせた設定のようです。
親が帰ってくるまでの一人で家にいる時間を、なるべく食堂で過ごせるように計らっています。
塾や習い事の前後の時間に利用したりもできます。
食事だけでなく地域の子供の居場所として寺子屋風に、無料で勉強を見てくれるところもあります。
食材は寄付、調理は地域のボランティアが手掛けることが多く、食事の料金は、子供は無料~300円位です。
大人は300円~500円位で食べられるが、カンパ方式で値段設定していないところもあります。
親子で一緒に利用できるところが多い。子供には食べたあとの片付けをさせたり調理にも挑戦させるところが一般的です。

都内を中心に、こども食堂を手掛ける団体が集まる「こども食堂ネットワーク」には、58の食堂が登録されており(2016年7月6日現在)、食材、寄付金、ボランティアの情報が集まります。
地域のこども食堂へ行きたい人、手伝いたい人を結びつける役割を果たしています。

顔見知り同士や初対面の人たちが世間話をしながら食事が進みます。
困窮している様子の人はいないように感じられます。実際には、参加者のほとんどの方々がなんらかの福祉の支援をうけていたり、課題を抱えていたりしていたり、つらい体験をしていますが、見た目にはわかりません。
一緒に食事をした人たちは、子どもの食事マナーをきちんとしつけている印象です。

様々な課題を見える化し、地域と共有し、支えあい、生きにくさを取り除ける場所。
こども食堂というかたちで、誰でも来ていい、悩みを話せる、暖かい場所ができています。
横のつながりという言葉はよく聞くが、どうしたらいいか分からない人が多いのが実情です。
でも、ここで一緒に御飯を食べることで、つながることができます。

大事なのは支援の敷居をいかに下げるか。
子どもの問題は親の問題であり、地域の問題です。
「こども食堂を開く時『困っている人やお金がない人は来てください』と言ったら、絶対に来ないでしょう。
また、そんな情報も届かないかもしれません。
特にひとり親の方々は支援や制度、人や地域とつながる時間の余裕が全くありません。
問題はお金だけでなく「時間」と「つながり」の困窮による孤立です。
子ども食堂の意味は“単に子どもがご飯を食べる場所”ではありません。
子どもも大人も社会的孤立の状態にあって得られない情報や、支援、制度利用、つながりを得られる場が必要です。
多くのお母さんが、理解のないところで子育てをしており、どこかに相談に行くのではなく、自然に悩みを話せる場が望まれています。

こども食堂のいちばん大きな意義は、新しい支援者を掘り起こしたことです。
子どもの貧困問題などに心を痛めつつ、でもこれまで動くキッカケのなかった地域の主婦層など「ふつうの人たち」が、行動し始めました。
日本の貧困問題を改善・解決に導く力になるのでは、と期待されています。

食事のときの周りの環境やなごやかな雰囲気が、子供にはとても重要です。
温かい食事は生きる力につながります。
空腹を満たしてくれる人がいるんだということに、子供は強い信頼を感じるし、また明日もがんばろう!という気になります。
関わるスタッフは、ほとんどが無償ボランティアで、地域社会で子供を育てようという大きなウエーブが来ているようです。
行政側も子ども食堂の運営に対し、経済的支援を行うことを検討している段階です。
多くの食品メーカーも子ども食堂の動向に着目していると思われます。