カートやアウトドア用車椅子の導入で、
全国から利用者が集まる富士見高原リゾート
幼い子供たちからお年寄りまで、そして、障がいを持つ方々とそれをサポートする方々、誰もが分け隔てなく自然と親しめる“ユニバーサルなフィールド”というイメージが定着しつつある富士見高原リゾート。
自然景観の維持という観点から、園内のすべてがバリアフリーというわけではありませんが、自動操縦のカートやアウトドア用車椅子の導入をはじめとして、知恵や工夫、思いやりの心で、多くの人々が楽しさや感動を共有できるリゾートづくりを目指してきました。
その結果、障がいを持つ方々やそのファミリーが県内・近県だけでなく、全国からの利用者も増加中です。
実際、2014年の元旦には、富士山の横から昇るご来光を眺めようと、氷点下5度の寒さの中にもかかわらず、およそ200人ものあらゆる年代の方々が富士見高原創造の森(彫刻公園)に集まったほど。
中には障がいをお持ちの方やそれに付き添ってこられた方の姿も少なからず見受けられました。
もちろん、観光シーズンには、八ヶ岳編笠山・富士山・南アルプスの北岳・北アルプスの奥穂高岳を一望できることもあり、創造の森へのルートがにぎわいを見せています。
問題は、利用者層の高齢化や急な登り道
かつては年間約70万人(※)が訪れていましたが、1997年頃から客足が鈍りはじめ、2008年からは30万人台にまで落ち込んでしまいます。
原因は、景気低迷やそれに伴う個人消費の抑制。
レジャーの多様化もそれに追い打ちをかけました。
しかも、アウトドアのレジャー市場では、別のファクターも大きく影響しています。それは、利用者層の高齢化という問題です。
富士見高原リゾートでは、山麓から創造の森公園までの誘導路が、標高差200m・延長1,500mあり、徒歩での来場又はスキー場のリフト利用に限定される状態でした。
ご高齢の方々の中には、車椅子を利用されている方や長時間歩き続けることが困難な方も増えてきていましたし、障がいを持った方々や幼い子供たちにとっても、いささか厳しい道程でした。
それをカバーするため、当初は車椅子での乗降ができるワゴン車の利用を行いましたが、安全な運行が確保しづらい状況であり、また、利用者数が限定されていました。
※資料:観光地利用者統計調査(富士見高原全体での延べ人数)
余剰カートの活用で安全な往復路を実現
別の輸送手段を検討しているうち、富士見高原リゾートが管理するゴルフコースで新たなカートを導入することに伴い、余剰になる旧カートを利用できないかという話になりました。
また、創造の森公園までの誘導路の舗装が2011年に実施されることになり、電磁誘導線を埋設すれば、自動運転で安全にカートを運行できると判断。2012年5月から導入する運びとなりました。
カートは全部で60台を導入。その結果、延べ利用台数は2012年2,270台、2013年5,751台、2015年11,500台(約35,000人の利用)と拡大中です。
アウトドア用車椅子で自然環境の維持とコストの削減を両立
それだけでなく、富士見高原リゾートをあらゆる人々が楽しめるユニバーサルなフィールドにしようという計画も同時に進行していました。
ある一人の職員の方が、その中心となって活動していたのですが、水陸両用車椅子の「HIPPO (ヒッポ)」に注目。
取り回しが簡単で、利用する人も介助する人も楽にいろいろな場所に行けるだけでなく、砂利道や林道、ぬかるみや雪道も進めるからでした。
なにしろ、園内の遊歩道をすべて舗装してバリアフリー化することは、予算的にも環境保全の観点からも、大きな負担を強いられますし、移動範囲が舗装路だけでは、一般的な車椅子に乗ったままで花や樹木を間近で見ることもかないません。
「HIPPO」を利用できれば、道路の舗装が最小限で済み、自然環境も保てる上、コストも抑えられます。
もちろん、季節の花々や樹木とのふれあいも楽しめます。
カートにも載せられるので、花の里や創造の森までカートで行き、現地では「HIPPO」で散策するという使い方が一般的。
2011年に4台、2014年7月にはさらに3台を導入し、現在では計7台が稼働中です。(無料レンタル)
遊歩道自体は、家族が一緒に並んで歩ける道幅を整備の基準として、路面にウッドチップを敷設し、「HIPPO」が利用でき、歩行者の歩きやすさも確保しました。
他に牽引式車椅子補助装置「JINRIKI」も無料で利用可能です。