大日本塗料株式会社 建築塗料事業部マーケティンググループ 主任 川本明宏さんへのヒアリング
2017年5月25日 上坂
シックスクールが問題となり、学校における濃度測定が始まった時期(15年前)に溶剤ゼロのノボクリーン(特許取得)を発売した。当時はよく売れた。
VOC(常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称=有機溶剤の揮発量)が0.01%(100ppm)未満であれば、ゼロと言っていいそうだが、大日本塗料のノボクリーンは完全ゼロである。
においは若干するが、塗料のものであって、有機溶剤のものではない。2日で臭わなくなる。
有機溶剤を使用するのは、水性塗料では凍結防止剤と成膜助材としての利用のためである。
有機溶剤は高沸点のものはなかなか揮発しないので、悪影響が長く残る。
低沸点のものは短期間で揮発するので、揮発後は悪影響が残らないはずである。
長く悪影響が残るとしたら、それは塗装の仕方が悪いからである。
塗装インターバルが標準仕様塗装として指示したものより短いか、厚膜の塗り過ぎではないか。工期を急がせた場合にはリスクが発生する。
塗装後十分な期間を空けずに引き渡すことも厳禁である。
また、木材などを繋いだ隙間に塗料が入り込み、その部分がなかなか乾燥せず、揮発が長く続くこともあり、塗装方法には厳重な注意が必要である。
塗る部位によって、製品が異なってくるが、全般的に水性塗料が増えている。
内壁に塗るノボクリーンはコンクリート、モルタル、各種ボード、木部、鉄部、ビニールクロス面で使用されている。
内壁でも木に塗るものは、木ヤニやシミへの対応の必要性から、ノボクリーンは使用できない(黄ばんでしまう)が、木の種類によってはノボクリーンエポシーラーで対応可。
床のワックスは当社では発売していない。
屋外用で有機溶剤0のものは無い。
当社でも1%未満だが使用している。
水性塗料の品質も上がっており、屋外用(DNTビューウレタン、DNTビューシリコン、DNTビューフッソつや有り)では3日程度で触ってみて乾いた状態になるが、塗膜性能が発揮されるには7日程度の養生が必要。
塗料の安全性を判断するにはTVOC(缶に入っている状態でのトータルのVOC)が一番の基準になるとのこと。公表義務はないが、メーカーに聞くと教えてくれると思う。
塗装は下塗り1回、上塗り2回が一般的である。それぞれの塗りの間に必要な時間は2時間から数日まで、製品によっていろいろである。
ノボクリーンは割高だが、工賃までを含めると1割程度の差である。1750円/㎡(積算価格・・実態はこの6~7割)。
学校における濃度測定では、塗装後1週間程度窓を開けっ放しにしてから、5時間以上密閉し、24時間換気を稼働させての測定(8時間または24時間)である。床からの高さは1.2~1.5メートルである。VOCは重いので床近くにあるかもしれないが、測定されにくい。ホルムアルデヒドなど化学物質の数が限定され、ほぼ合格しているので、最近では業者の関心も薄くなっている。
色は白が標準で、要望に応じて一缶4kg単位で作る。何色であっても有機溶剤はゼロである。
イソシアネートに関して:
水性のウレタン塗料にはイソシアネートは入っていない。ほぼ一液タイプである。
ウレタン塗料でも、シリコン塗料でもフッ素塗料でも、溶剤形の2液タイプの硬化剤(80:20の20)がイソシアネートであって、混ぜることでウレタン樹脂に固まる。比率が違うと化学反応せずにイソシアネートが残るというリスクがある。
しかし塗装後時間が経過すれば、仮に変色した場合であっても、イソシアネートは抜けている(イソシアネートは空気中の成分と反応し、別の物質になっており、塗膜中にイソシアネートは残りません)ので、イソシアネートが発生することはないはずである。