株式会社セラリカNODAの野田泰三社長に話を伺いました。パンフレットなどの資料と合わせて、解説します(2017年6月9日)
木ロウの製造メーカーとしての歴史
セラリカNODAは1832年(天保3年)創業の老舗で木ロウの製造会社として創業しました。
木ロウ(木蝋・もくろう)は、ウルシ科のハゼの実から得られる日本特産の天然植物系ロウです。
日本の国技である相撲。お相撲さんの髷を結う鬢付け油には木蝋が欠かせません。あの激しいぶっつかり合いで、その他の油ではバラバラになってしまうのです。
髪を束ねて強い力でもバラバラになならないしなやかに束ねる働きと、煎餅のモチ生地がベタベタくっつかない、この相反する働きを複合的にやってのける優れものの天然材料が木蝋なのです。
木蝋はジャパンワックスと呼ばれて、明治以来ヨーロッパ、アメリカにずっと輸出が続いています。
ポマード、チックなどの整髪料、クレヨン、色鉛筆、食品、医薬品、口紅など化粧品のほか、トナー、インクリボン、CDなどOA機器にも使われます。
自然塗料としての活用
シックハウス症候群が社会問題化する中、世界に先駆ける理想的な自然塗料である食品用植物成分100%の「セラリカコーティング」の開発をスタートしたのは1998年です。
これは野田社長が末期がんから復活を遂げた時期と重なります。
大枚をはたいて買ったマーホームがシックハウスで住めない家となった悲劇を目の当たりにしたことで、一度死んだ人生、世の中のために役立ちたいという強い思いから、自然塗料の開発を始めました。
死を意識することがなければ、スルーしていただろうという言葉が印象的でした。
当時ドイツの自然塗料がもてはやされていましたが、原料屋として分析してみると、品質がさほど良くないことに気づかされました。
自然塗料の多くは亜麻仁油とロウを原料としています。亜麻仁油は最後は個体になる油ですが、早く乾燥・酸化させるために、強制酸化させた亜麻仁スタンド油という質の悪い油を使っていたり、乾燥剤として重金属を使用していたり、達成感を高めるために香料を使用したり、揮発性物質をあいかわらず使用していることがわかったのです。
セラリカNODAでは、セラリカコーティングの性能に自信を持っています。どこかが「暮らしの手帳」のような各社の製品比較をやっていただき、その結果を公表してくれることを野田社長は熱望されていました。
自然塗料はてんぷら油と同様に、自然発火するリスクがあるのではないかと心配される方もおりますが、セラリカコーティングピュアで実験したところ、280度まで加熱しても引火致しませんでした。
セラリカNODAでは世界No.1蜜蝋コンテストを開催し、全世界の蜜蝋を調査致しました。また開発当時に蜜蝋ワックスを含む様々なセラリカ(天然ワックス)の配合を300種類以上検討し、最もコーティング剤として優れている処方が現在のセラリカコーティングなのです。
セラリカコーティングの成分
セラリカコーティングは揮発性物質や香料を一切使用していません。
亜麻仁油は食用の精製亜麻仁油を使用しています。
セラリカコーティングではカルナウバロウと木ロウとキャンデリラロウという食品にも使用される3種のロウを使用しています。
加えて、米ぬかから有効成分のみを高純度で抽出しています。
カルナウバロウは砂地や河辺に群生している野生の植物、カルナウバヤシ(原産地ブラジル)から採れます。扇状の葉を覆っている粉(ワックス)は、降雨のほとんどない季節に水分の蒸発を防ぐ役割を果たしています。15年位で、ワックスがとれ、50年を経ると高さ12〜15mの巨木にまで育ちます。
天然植物ロウ中、つや・光沢性・強靭性・硬さ・微結晶性などが最も優れ、他の油性原料をまとめる硬度調整の機能が高く評価されています。
キャンデリラロウは厳しい砂漠の中で生き抜いているタカトウダイ草が、水分の蒸散をコントロールし、草の表面に自らを保護するために分泌するロウで、口紅の原料として世界中で使用されています。
人にも地球環境にも安全である、というイメージだけで捉えられがちな天然素材ですが、高い機能性も重視するべきというのが野田社長の考え方です。
また天候次第で生育が左右されることから、天然素材は供給力に難点があります。供給力を確保するためには、長年の原料屋としての仕入力が大きな力となっています。
セラリカコーティングは食品用植物成分100%なので、舐めても大丈夫なほど、人体にも安心です。ペットや赤ちゃんが直接触れたり、舐めたりするフローリング用のワックスとして最適です。
セラリカコーティングの機能
桐ダンスや床に付いたクレヨンの跡や仏壇の金物の汚れを落とすほどの洗浄力、植物の生態保護力を利用した通気性、厚い保護力がつくる高い撥水性、木の変色を防ぐ耐光性、ホルムアルデヒドが全く出ないだけでなく、塗布面及び室内のホルムアルデヒド放散抑制効果があげられます。
琥珀色の上品でしっとりとした光沢が特徴で、乾燥を防ぎます。
無垢材では調湿性を妨げず、木の内部に浸透します。ロウは植物体を守るためのものだからです。浸透性によって、耐久性も高まります。
無垢材には塗料を塗らないという考えもありますが、無垢材に塗布する一番の理由は、無垢材は手あかがついてしまうため、手あかをつきにくくするために塗布することをお薦めしています。
木に塗った後も、木の香りがほのかに残り、本来、木の持つ色や、木目がきれいに浮き上がり、材を硬く丈夫に保護します。撥水性が高く、手あかがつきにくくなり、拭き取り後に水の跡も残りません。
無垢材だけでなく、合板、集成材および樹脂コーティング材の家具、木工品、フローリング、壁、ドア、柱、鴨居などの保護・ツヤ出しにご利用ください。金属や革にもご使用ください。金属にはさび止め効果もあるので、銅像など屋外の金属への利用も可能です。
YKKAPは無垢材を使った玄関ドアにおいて、様々な塗料の日光による耐光性試験を行った結果、退色防止効果が最も高いということで、セラリカコーティングを使っていただいています。
硬度については、ロウですので十分に硬いと認識していますが、現在様々な機関と調査を進めています。
ご利用方法
汚れをよく掃除し、凸凹を無くしてから水ぶきし、よく乾燥させてから、塗ってください。
布やスポンジ、ハケ等で塗ることができます。
特に目の粗い柔らかめのスポンジを使用すると、塗りやすくスポンジに残ったワックスを絞り出すことで無駄も出ません。
クリームタイプで、水や溶剤で薄めていないので、作業性や塗布面積が飛躍的に向上しました。品質も極めて安定しており、塗布用の布などの汚れが製品に再付着せず、衛生的です。
100gのチューブで無垢材なら20㎡、樹脂コーティング材(ウレタン塗装材など)なら85㎡程度にご利用いただけます。
一度塗りで十分効果があります。
税込み3240円で、通販でもお求めいただけます。
SMB建材(昔は住友商事)が総販売代理店となっています。
完全に乾くのに通常1日かかります。
ニオイについては、揮発性有機溶剤を一切使用しておりませんので溶剤臭はしません。
これは塗料として特に長いわけではありませんが、つけすぎたワックスをべとつきがなくなるまで、完全に拭き取れば数時間で乾燥します。
無垢材以外の合板や塗装をしてあるものには、浸透しないので、ごく少量で塗り広げてください。
家具に使えばここから発散するVOCも抑制する機能もあります。
ワックスとしての利用だけでなく、ここだけの話ですが、油汚れの掃除の際にも、手の保護のためにセラリカコーティングを使っていただければと思います。ハンドクリームのような柔らかさが特徴です。
床の場合、半年に一度は上塗りのメンテナンスを行ってください。
洗浄力があるので、普段から拭き掃除の感覚でご利用いただいてもいいのではと思います。
家庭用の場合、キャップをきちんと閉めて、夏場は冷蔵庫で保管ください。
拭いた布の処理については、揮発性有機溶剤を使用していませんが、念のため使用後の布を濡らしてから捨てて下さい。